WOCIT HP 2004-7-2
イラク問題につき、2004年5月26日、世界市民法廷(WOCIT)の総会が採択した「提案」は、国際連合、世界各国の首脳、国会議員、世界市民にたいし、WOCITの立場を表明するものであり、そこでは平和を回復するための提案がなされている。
なお、WOCITのために、判事候補を推薦してくれることをも要請している。同26日に採択された文書は、とりわけ、つぎの旨述べている。
イラク戦争にかんするWOCITの提案
国連事務総長、世界各国首脳および国会議員
WOCITは、国益ばかりでなく、全人類の利益を考慮しつつ、2000年から活動してきました。イラク問題については、2件WOCITに付託されています。法的側面の判断は、総会の任務でなく、WOCIT諸裁判所の任務でありますが、しかしながら、イラク問題は、重大な様相を帯びてきましたので、総会は2004年5月7−26日に同問題を審議し、同26日、以下のような建設的な提案を行うことを決定しました。
世界市民法廷会長 金子 利喜男
追記 国連事務総長、国連総会議長、専門機関の長、各国首脳は、それぞれWOCITに10名の判事候補を、国会議員は2名の判事候補を、推薦して下さるようお願い致します。
イラク紛争にかんする提案
世界市民法廷
2004年5月26日、札幌
A. 自決権と国連憲章
まず第1に、国連の3つの目的のひとつが、人民自決権の原則の尊重にもとづく諸国間の友好関係を発展させることと定められていることに注意を喚起したい。国連憲章は、他の国際条約に優先するものであり、加盟国は同憲章を誠実に履行しなければならない。
B. 中立的機構と直接選挙
無秩序と軍事的対立が残存し、侵攻国がイラクの統治体を支配している限り、選挙を行うことは不公正で、危険であり、また不可能であろう。政治的理由で選挙から排除された反対勢力は、そのような選挙を阻止するため、選挙会場を攻撃することもありえよう。このことは、現在の統治制度が、中立的な機構に代えられなければならず、また非中立的な性格の外国の軍隊がイラクから撤退することが極めて望ましいことを意味している。
C. 国連の速やかな提案
国連またはイラクの利害関係国は、外国軍の中立化、イラク国民の総選挙の方法にかんする計画をただちに提示しなければならない。イラク国民の利益を考慮し、われわれは次のように提案する。
1)婦人だけでなく、政治的理由で排斥されているイラク人にも選挙権が与えられる。
2)被選挙権は、いま政治的理由で犯罪人とみなされているイラク人にも付与される。
3)イラク人を含む中立的な国際選挙管理委員会を組織することが望ましい。
4)選挙当日には、中立的性格の兵士のみが、選挙会場を守衛する。
5)政治的理由で犯罪人とされてきた者の代表者も、立会人となれること。
D. 武器使用停止の訴え
われわれは、すべての交戦当事者に全般的休戦協定を結び、ただちに武器の使用を停止することを要請する。戦闘の継続に固執するなら、国際法の原則と規則を厳守すべきである。捕虜の虐待や人質は、国際法に反する行為であるとみなされてきた。
E. 武力行使の許可
国際紛争は、平和的に解決されなければならず(憲章第33条)、加盟国が武力行使できるのは、国連の許可があった場合(第42、53条)、それに自衛権の場合である(51条)。最初に、米国も英国も攻撃されたのではないから、自衛権は援用できない。では、国連からの許可は?
F. 国際連合の許可があったか
2002年11月8日、安保理は決議1441を採択し、イラクが国連査察委員会と国際原子力委員会に無制限の査察権をあたえなければならないと決定し、安保理がイラクのその義務の継続的違反として「重大な結果に直面するだろうということをイラクに繰り返し警告してきたことを想起する」とした。(13項)
ただし、同決議1441について、安保理は、「この問題は、継続審議中であることを決定する」とした。このことは、問題がさらに審議されなければならないことを意味する。イラクにかんし、アメリカは国連の許可を得たかったが、同国の提案が安保理で採択されないことをみとって、国連の明確な許可をえずして、武力攻撃の準備を開始し、イラクの元首サダム・フセインが自国から逃亡するよう宣言した。しかし、かれは国を去らなかったので、
2003年3月20日、驚異的な現代的技術をもちいて、米軍はイラク侵攻を開始した。
ここでも、世界の市民は、いかに国連の現制度が不完全で、非民主的であるかを理解するであろう。安保理の5常任理事国の1国でも、さも絶対君主であるかのように、拒否権によっていかなる決議の採択をも拒否できるのである。
諸国が国家軍備を保有し、国際文書を独善的に解釈するなら、将来も軍事紛争の発生は不可避であり、平和の論理は、つぎのことを要求する:
1)安保理の常任理事国が拒否権をもたないように国連を改組する。
2)国際法の紛争にたいし、強制的管轄権を有する国際裁判所が存在すべきである。
3)諸国は、その国家軍備を縮小し、その軍備の全面かつ完全撤廃を達成すること。
4)国連加盟国は、各国の憲法にそって、その兵力を安保理に利用させる。(憲章第43条)
G. 法の支配と裁判所
国内事項への不干渉の原則(憲章第2条7項)に注意をはらっていただきたい。国連の許可なしに、いかなる加盟国も、他の加盟国の領土に侵攻する権利も有さず、その政治的、経済的、社会的、その他の制度を変更してならないのである。
ここで明らかになるのは、イラク侵攻それ自体、重大な法的問題であり、しかもそれが先決的な性格を有するということである。それが国連憲章に違反し、国際法上侵略であることが判明するなら、イラクはその侵攻から生ずる行動を承認すべきいかなる義務をも負っていないということになる。
それゆえ、正義は、まず第一に、問題の侵攻が国際法上合法か否かを確定することを要求する。われわれが直面するのは、そのような事件にたいし、強制裁判管轄件を有する国際裁判所が存在しないということである。これらの裁判所は、両紛争当事者が裁判管轄件に合意したときのみ、その紛争にたいする管轄権を有している。これこそ、われわれが、普遍的管轄権を有する世界市民法廷を創建した理由である。
1)国連、すべての国家、すべての人民は、イラク人民の自決権を尊重すること。
2)すべての交戦当事者は、全般的休戦に合意し、武器使用をただちに停止すること。
3)イラクの現在の統治制度は、中立的な機構に変更すること。
4)イラクを侵攻した非中立的な外国軍隊は、その部隊をイラクから撤兵すること。
5)イラク国民の要望を考慮し、国連およびイラクの利害関係諸国は、外国軍の中立化と直接総選挙の方法にかんする計画をすみやかに提示すること。
6)イラク国民自身が公正で、実行可能な選挙を行えるなら、それはイラク国民自身によって施行されるべきである。
7)国連、すべての国家および国会議員は、法の支配を樹立するため努力すること。