WOCIT HP J-JRA-Proposal (2)
10 March 2007
日本側およびロシア側への第2次提案
2007年1月25日
日本国総理大臣 安部 晋三殿
ロシア連邦大統領 プーチン ウラジミロヴィッチ殿
関係者各位
世界市民法廷(WOCIT)
WOCIT会長、札幌大学教授 金子 利喜男
WOCIT総会会長、博士 クラウス シュリフトマン
WOCIT総会議長、博士 ウイリアム カーター
WOCITロシア準備委員会委員長、博士 キリル チェレフコ
WOCITロシア準備委員会副委員長、博士 アレクセイ キリチェンコ
WOCIT準備委員会委員、札幌学院大学教授 松本祥志
WOCIT準備委員会委員、早稲田大学教授 多賀秀敏
WOCIT日本委員会事務局長、札幌大学教授 鈴木 礼暁
賛同者
元島民、係争諸島事件のWOCITへの提訴人 小野 弥生
元島民 千島歯舞島居住者連盟理事 岩田宏一
元島民 根室隣保院総務課長 柏原 榮
1.はじめに
1.2000年、世界平和および法治社会の樹立に寄与することを目的として、インターネットを駆使しつつ、諸国の国益だけでなく、多元的かつ全人類的な利益をも考慮する世界市民法廷(WOCIT、ワシット)が札幌で設立され、徐々に発展してきたことを謹んで申し上げます。WOCITは、国際連合、世界的または地域的な議員連盟、世界連邦推進団体等とも協力しあいながら、平和な世界の構築の一助になれれば幸いであると考えております。
2.世界市民法廷は、主要機関のひとつとして、中央裁判所のほかに総会を有しておりますが、司法的な性格のWOCITは、本年8月16日に起こった密漁射撃事件および領土問題に無関心であるわけにいかず、それにもまして日本とロシアの関係が改善されることを切望しておりますので、本年1月25日、両国首脳および本件および領土問題の関係者に本文書を送付することを決定いたしました。
2.司法的解決の再提案
3.去る2005年11月14日、世界市民法廷が、プーチンV.V.ロシア大統領および小泉純一郎前日本首相に提案したのは、懸案の領土問題を解決するためには、日ロ両国政府が外交交渉だけに固執せず、司法的解決をも視野にいれていただきたいということでありました。その精神が今でも有効な同提案に加えて(追記1および添付文書)、本文書は世界市民法廷による第2の提案であります。そのなかで、もっとも重要なものは、下記の通りです。すなわち、
もし外交交渉により、2009年末まで領土問題の解決をふくむ日ロ平和条約が締結されない場合に、日ロ両国は、係争諸島にかんする法的問題の解決を2010年末まで国際司法裁判所にゆだねる。
4.外交交渉による円満な解決を切望しつつも、WOCITが外交交渉と司法的解決の併用を提案するのは、今回も「外交交渉の歴史と現状をかんがみるなら、交渉だけの単線経路は、ふたたび座礁し、あるいは迷路に陥いって、問題を打開することができず、むしろ解決はさらに遠のくことを危惧し」ているからであります。(前回の提案の前文)
3.射撃事件での自制を要請する
5.8月16日、係争諸島の日本とロシア間の中間ライン近辺で、日本の第31吉進丸が、密漁の疑いをいだいたロシア国境警備船の停船命令にしたがわなかったので銃撃をうけ、漁民の森田光弘さんが死亡しました。そのため、他の船員の引渡し、国際責任(謝罪)だけでなく、係争諸島の帰属問題をめぐっても、日本側とロシア側との関係がこじれ、その他の分野にも影響が現れました。(事実については、jp)
6.WOCIT総会は、所与の事件について法を宣言する機関でないので、本件についても追記2で関連条約および判例などを少し紹介するに留めますが、しかしながら、われわれWOCITは、このような事件において日本側とロシア側の双方があまり感情的にならず今後はもっと自制し、そのような事件の再発を防止する措置をすみやかに策定することを要望いたします。
4.日ロ合同審査委員会
7.WOCITが希望するのは、両国政府が、係争諸島についてはもっと互恵と友好の精神に立脚する雅量を示し、ひいて日ロ関係の改善だけでなく、大局的な見地にたって、東アジアにおける紛争解決の制度化および平和樹立のために寄与していただきたいということであります。世界市民法廷の具体的提案は、第1に、上記の外交交渉と司法的解決との併用であります。
8.第2に、将来ふたたび起こることのある銃撃事件の解決に資する目的で、WOCITは日ロ合同審査委員会(仮称)の設置を提案いたします。同委員会が設置されるなら、それは重要な証拠を国際的に調べる可能性を開くだけでなく、事実の認定もより公正に行うことができ、したがって一般に事件の解決(和解または判決など)がより公正に行われ、また今回の事件のように、被告がサハリンの裁判所で認めた事実を帰国後否認するなどという場合は、もしあるとしても、可能性もきわめて少なるでしょう。
9.重要なことは、同委員会の設置が、東アジアにおける紛争解決制度の初歩的な模範ともなって、所与の事件について疑念や悪感情の高まりを防止することにも大いに役立つことであります。この委員会は、たとえば、別記3のよう機関でもよいと考えております。
5.関係者への要望
10.今回の事件および領土問題にかんして、下名の直接的または間接的な関係者にも、WOCITの要望をそえて本文書をお送り致します。
1)国連事務総長 WOCITの重要な対外活動について、われわれは何回か国際連合に報告してまいりましたが、今回は本文書に加えて、2005年11月14日わが法廷がプーチンV.V.ロシア大統領および小泉純一郎前日本首相に宛てた提案をも送付いたします。貴事務総長バン・ギムン殿が、アジアの法治社会および紛争解決制度のさらなる発展に寄与していただければ本当にうれしく存じます。
2)報道機関 WOCITは、2005年11月14日の前記文書で述べた要望にふたたび報道機関の注意を喚起したと思います。すなわち、「報道機関では、外交交渉と司法的解決の併用の問題が、ほとんど論じられていない。われわれが報道機関に要望したいのは、これらの諸問題に焦点をあて、それにかんする世論調査を行うことである。」(17項)
3)日ロ両国の海上警備当局および司法機関 標記の機関にたいし、WOCITが要望したいのは、以下の通りであります。
a. 日本側は、自国船による密漁を防止する目的で、日本船舶にGPS(Global Position System)を装備させ、その航跡を電子的に記録することを義務化し、さらに漁船の指導を徹底して係争諸島海域の警備を強化し、他方、ロシア海上警備当局は船員への射撃を回避するよう細心の注意をはらう。
b.日ロ両国の当局は、所与の密漁または射撃事件についての情報をすみやかに提供しあう。
c. 少なくとも銃撃事件においては、その当局はその重要な措置の情報を相手国政府だけでなく、関係自治体にも送付する。
日ソ共同宣言の50周年後、2007年の正月からは、日ロ関係のさらなる改善および発展の第2幕が開かれ、それがアジアの法治社会のスタートの模範にならんことを期待しております。
別記1 領土問題の司法的解決
2005年11月14日付の文書で、WOCITが前日本国総理大臣小泉純一郎殿およびロシア連邦大統領プーチン・ウラジミロヴィチ殿に要望しましたものは、とりわけ、以下のように述べております。
13.このような情況下で、われわれが提案したいのは、外交交渉で領土問題を解決する確実な方策が長年にわたり見いだされてこなかったので、すみやかに日ロ両国政府は、つぎのような趣旨の文書(イタリック体)に合意する、ということである。すなわち、
14.もし外交交渉により、2007年末まで領土問題の解決をふくむ日ロ平和条約が締結されないなら、日ロ両国は、係争諸島にかんするつぎの法的問題の解決を2008年末まで国際司法裁判所にゆだねる。
1)日本国が、1951年のサンフランシスコ平和条約で放棄した「千島列島」の地理的概念の範囲は、どこまでか?
2)日本国が「放棄」した諸島は、国際法上は無主地か、またはロシア領か?
3)質問2の回答が、無主地であるという場合、それでは同諸島にたいするロシアの支配は不法か、それとも合法か?
4)日ソ平和条約締結の後に、歯舞群島と色丹を日本に引き渡すとの1956年の日ソ共同宣言は、現在でも法的に日本とロシアの両国を拘束するか?
5)係争諸島について、アイヌ民族は先住権を有するか、それはどの範囲まで及ぶか?
小泉内閣の末期には、日ロ首脳会談が開催されても、そのご共同コミュニケさえ発表できないほどの日ロ間の溝が深まりました。このようなことは、かつてなかったことであります。ここに至って政治外交的な手法の限界が浮き彫りになったことをかんがみましても、WOCITの提案は、それだけ妥当性を有するものであります。ただし、安部晋三内閣が、最近(2006年9月26日)成立しましたことをかんがみ、WOCITは上記14項の部分を下記のように修正して再提案いたします。すなわち、
もし外交交渉により、2009年末まで領土問題の解決をふくむ
日ロ平和条約が締結されない場合には、日ロ両国は、係争諸島にか
んするつぎの法的問題の解決を2010年末まで国際司法裁判所に
ゆだねる。
別記2 射撃事件の先例および条約
密漁船にたいする射撃事件については、アイム・アロン号事件が有名であります:
1929年3月20日、ルイジアナ沖で巡航中、米国の沿岸警備船ウオルコット号は、酒類密輸入の嫌疑あるカナダ船アイム・アローン号によびかけた。アイム・アローン号は、沿岸から3マイル外にいたが、目撃されたときは沿岸から1時間航程内のところにいた。同号が停船命令を拒否したので、ウオルコット号の船長は、公海に向け突進しはじめたアイム・アローン号の方向に空砲を撃つよう命じた。ウオルコット号は、アイム・アローン号を追跡し、船首を横切るように別の弾丸を撃ち、それから自分の火砲が故障するまで発砲しつづけた。3月22日、ウオルコット号は別の警備船デクスター号と合流し、同号が沿岸200マイルのところでアイム・アローン号を撃沈した。その船員は、船から飛び降り、甲板長は溺死した。船長と乗組員は、ニュー・オルレアンに連行され、そこで彼らは48時間拘禁された。
米国とカナダ間の仲裁が、1924年の協定第W条によりおこなわれた。カナダ当局は、アイム・アローン号の撃沈は、いかなる場合においても正当化されないといった。しかし、合衆国が主張するに、もしアイム・アローン号の船長が自分の船に停船を命じていたなら、撃沈は起こらず、それゆえ撃沈は「臨時停船を拒否した船長の違法行為」によるものであるとした。その最終報告書で、委員会は以下のように述べた。
中間報告で委員会は、同船の撃沈は、条約中の何によっても正当化されないと宣告した。いま委員会は、それは国際法のいかなる原則によっても正当化されないと付言する。アイム・アローン号は、数年にわたって酒類密輸入に使用され、事実上それは全員またはほとんど米国市民であった人びとのグループによって保有・管理されていた。その事実をかんがみて、同船または積荷の損失については、いかなる賠償も支払われるべきでない。しかしながら、同船の撃沈は違法行為であり、ひいて米国はその違法性を正式に認め、カナダ政府に謝罪すべきである。
上記のアイム・アロン号事件は、この種の事件のなかでリーデイング・ケースとして知られており、しばしば引用されています。条約について、まず言及すべきは、1957年に国連が採択した公海条約でありまが、それとほぼ同一内容が、1982年の国連海洋法条約によって定められております。すなわち:追跡権について、沿岸国は「外国船舶が自国法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由があるときは、当該外国船舶の追跡を行うことができる」(第111条第1項)、「追跡は、視覚的または聴覚的停止信号を外国船舶が視認し又は聞くことができる距離から発した後のみ、開始することができる」(同条第第4項)、「追跡権は、被追跡船舶がその旗国又は第3国の領海に入ると同時に消滅する。」(同条第第4項)
別記3 日ロ審査委員会
紛争の平和的解決制度につきまして、できれば日ロ両国が、より良いメカニズムを構想することを期待しつつも、WOCIT総会は、下記のような控えめで初歩的なものを提案いたします。
1.名称 日ロ審査委員会(仮称。以下委員会という。)
2.地位
1)委員会は常設機関とする。
2)委員会は日ロのいかなる機関からも独立した機関とする。
3.構成
1)日ロ政府がそれぞれ1名を委員を指名し、その2名の合意により
委員長をえらび、委員会は計3名で構成される。
2)所与の事件につき、別段の合意が成立すれば、委員会の構成はそれによる。
4.任務および任期
1)委員会は、射撃事件の事実を審査する。
2)日ロ両国政府に合意が成立すれば、委員会は密漁その他の事件の
問題の事実をも審査することができる。
(注:委員会の任務は、もっぱら事実の審査であり、それゆえ所与の事件の法的判断を控えるだけでなく、
領土係争地域の帰属問題にも触れないようにする。)
3)5名の委員の任期は5年とする。各委員は再選されることができる。
5.他の調査機関
1)委員会以外の国家機関、団体または個人が、所与の事件に
つき独自に事実の調査を行うことは妨げられない。
2)国家機関は、その法令にしたがって、事実に関する証拠を委員会に開示できる。
(これは、日ロ両国政府の合意を容易にするための控えめな提案です)